犬塚　征市

犬塚征市は資産家の次男として生まれた。
3歳年上の兄はとても優秀で、スペアとして生まれた征市に出る幕はなかった。
しかし両親も兄も征市のことを可愛がり、好きに自由なことをさせてくれた。
幼少期の征市は読書に傾倒し、その中でも特にシャーロック・ホームズに憧れた。

大学生になると、両親にねだり狩猟を習うことにした。
少しは冒険がしたいと憧れたのだ。
狩猟は征市に達成感を覚えさせた。

しかし大学を卒業した時、征市は進路に迷った。
両親の手伝いは、後継ぎの兄だけで手が足りている。かといって新しい事業を興すだけの才はない。
両親の指定した会社に入ることも考えたが、それもありきたりでつまらないと思えた。

少しの冒険と、誰かに信頼されたい気持ち。
それを満たすのは何かと考え、辿り着いたのがレンタルおっさんだった。

世間の人より恵まれた環境に育った征市にとって、レンタルおっさんの仕事は興味深く刺激的だった。
別にお金に困っていないこともあり、どんどんと依頼を受けた。
大した仕事もしていないというのに、ありがとうと言われることが嬉しかった。
これこそが天職だと、征市は思った。